
前にも書いた阿武隈川、福島を縦断し仙台平野から太平洋に注ぎます。個もあたりが福島・宮城の境界近く師走の柔らかい日差しをあびて何事もないように水面が光っています。 この辺りの地域、川の両岸には少々趣の変わった建造物が立っています。


通称「あんぽ小屋」、ここで例年皮の剥いた柿を吊るして乾燥させます。オレンジ色の柿が数珠のように簾のようにさがり、なんともいえない光景を創ります。 乾燥させるがゆえに果実中の放射性セシウムが濃縮し他の果実よりセシウムが検出されるリスクが高いことから、今年も加工自粛になりました。 食べられることのない柿が畑に捨てられ、また樹上で朽ち果てやがて落ちていくさまは何度か書かせていただきました。
遺失利益は賠償されるといっても、このような施設の償却はどうなるのか、将来販売を開始したとして顧客の残っているのか、産地の心配の種はつきません。遺失利益とは基準年の売り上げ実績-生産費用ですから、下降に関わるパート代は経費になります。経費は支払われないのでパート収入は全く補償されません。高齢者でも、比較的冬の現金収入が少ない農村地帯でこのような収入がなくなると、商工関係までボディブローのようにダメージが蓄積されます。

紅葉こそ終わりましたが水面に切り立った岩肌が映る「猿跳岩」、宮城とと福島の県境です。阿武隈川の水運が盛んな頃は舟の難所であり、先ほどの写真のように広い流域にゲートのように両岸に岩が立ちははだかるため、ここでダムのように水が堰き止められ上流に水害をもたらすことでも知られています。 両岸の岩を猿が跳ねて渡ったという伝説でこう呼ばれています。

猿跳岩からいくらも行かないうちに柿の干場かありました、ここは宮城県なので加工規制がないようです。逆に規制をしてしまうと「風評」を煽ることにもなります。 もともと放射能の飛散に行政区分もなく、同心円状に広がったわけでもありません。宮城県の柿は危ないといっているわけではなく、あんぽ柿の技術伝承は将来につなげて欲しいと思っています。
縦割りの行政システム、不安心理を煽るだけの報道スタイル、危機管理が機能してこなかった放射能災害。原発のリスクを活断層だけに求めるのではなく、全く持って人災であった事実を忘れていただいては困ります。
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