10日の夜は視察の一行を案内して県内の旅館に宿泊しました。翌11日は朝からテレビ新聞で東日本大震災の話題で持ちきり。総じて復興が進んでいない、除染が進んでいない、風評被害の影響が大きい、避難によって大規模な生活空白地帯が生じてそこは野生動物が異常繁殖して生態系に変化が生じている、等とというもの。

何でも11日は大震災があった日で、今月は2年4ヶ月目の節目ということらしいのです。粛々と生活、事業再建を進める側にとっては特に暦上の節目など何の関係もないのですが、風化の抑制という点では好ましいのかもしれません。
たまたま、今回は東京電力では珍しく善玉扱いされることが多い東電福島第一発電所長であった吉田元所長の逝去も重なり、東電関連ニュースも多く流れました。

福島でも早生系の桃が随分色つき始めました。1次産品の主力である桃の出荷販売が間もなく始まります。となるとまた問題になるのが「風評被害」。改善されつつあるという意見もありますが果たして如何でしょうか? まず、「風評被害」という概念。賠償に関る文書でも「いわゆる風評被害」と表現されますが、過去に起きた水俣病、オウム真理教に関る「オーム」「アレフ」等の似た名称に関る被害、東海村の放射能事故等々過去に風評被害が生じた事例はありますが、今回の原子力災害に関する「いわゆる風評被害」は規模、範囲、世論の捉え方などまさに参考になるものなどないほどの深刻な事態であるということで、「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」ではありませんが、過去に類例がない事象として新たな名称を考える必要がありそうです。
で、もっとも深刻なのが、消費者というか生活者心理が忘却や理解に向かうのではなく、新たな疑念や不信が生じるようなことになっていること。 今回の11日関連の報道でも多く出されていましたが、とにかく東京電力について信用できないという事。2月に電源が喪失して一時的に格納プール等の水温が上がり、まだ危険な水温までには差があるとして電源喪失事故の報告が送れたこと。この報告を受けた広瀬社長は事故から2年経過して続いてきた地元の信頼関係がくづれると激怒したそうですが、かく広瀬社長も最近「目先の黒字化と地元の安全とどちらが大事か」と 新潟県知事を激怒させたので、まずは社員と社長、どちらもどちらと言うところでしょうか。
東電については電源喪失後も「原因はねずみの感電によるショート」「ねずみ避けの網を設置中に配電盤に触れまた停電」と先端技術とは間逆の失態や発表が相次ぎ、さらに「汚染水の地下プールから水漏れ」「実は漏れていなかった」「地下水が溜まって廃炉作業に支障が出るので海に放出させて欲しい、地下水のセシウムは限界値以下」「指摘があって調査したら地下水にもセシウムが含まれていた」「事後現場の井戸から高濃度の放射性物質」「プルトニュウム検出」「楢葉町から高濃度の破片発見」「セシウムは土壌に付着するので外には漏れない」「海洋流出の恐れがあるで護岸工事を急ぐ」「海水のセシウム濃度が急激に上昇 原因は不明」新聞のヘットラインだけを並べても、いわゆる風評被害が起きないのが不思議で、まさに人災で社会的なことに感心があり情報に接している人ほど風評に敏感になります。これが情報の不足や科学的根拠に欠ける従来型の風評被害とは基本的に異なるところです。福島の観光や買い控えが科学的根拠に基づいているとは言いませんが、科学的根拠の発信者が信用を失っていることが福島の苦闘に繋がっています。
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