衆院選も都知事選も予想通りの結果に、地震予報も天気予報もこのくらい当たればというのが感想です。もっともこれほどの差がつくのは想定外で、震度5強の予想に震度6が来たようなものでしょうが。
YAHOOニュースのヘットラインで保守の論客櫻井よしこ氏が年間の放射線量を5mシーベルトにしないと福島の復興は覚束ないという発言をしたということを知りました、約1週間前です。同様のことを言われる知己のマスコミ関係者もいたので少々興味を覚えていました。


阿武隈川の親水公園鳥インフルエンザ前までは白鳥の餌場で親しまれていました。今年も白鳥は来たものの公園は荒れ放題、半年以上前の線量立て札がそのまま残っていました。

例えば対極の(今度の選挙でも何の見せ場も作れなかった)福島瑞穂さんなどよりも、櫻井論調の方がはるかに現実的であると常々思っていたので調べてみると、ヘットラインは週刊新潮の連載コラムからであったようです。
しかし、読むと被害地の福島県民からすると強引な引用や意見誘導が見られちょっといただけません。ダイエーの中内功氏を書いた「カリスマ」以来ノンフィクションライターの佐野真一氏の著書は見るようにしているのですが、先般橋下徹大阪市長の「ハシシタ」でミソをつけてしまいました。この2件を採って硬派知識人の劣化というのは早計でしょうか。
櫻井氏の主張は、「被曝はICRPが(低いに越した事は無いが)20mシーベルト/年間でも大丈夫だといっていて、当初政府も5mシーベルト(以下同)が避難の目安といっていたのが、民主党ポピュリズム政権の細野環境大臣が1mシーベルト以下を約束した。これにより避難民の帰還が遅れ費用も莫大なものになる、賠償金に慣れた避難者は社会復帰が遅れるばかり。と言うような内容でした。」 論拠や傍証として遠藤川内村長の発言引用もありますが、都市部の生活になれた若者が村には戻りたがらないというようなもののあり、全体のトーンとして遠藤雄幸さんがこのような主張をするとは思えず、言葉の端々を櫻井氏が強調して書いたものと思われます。マスコミ対応でよく言われることですが、発言を都合よく切り取ることによって発言者の意図と違ったものが出来上がることがよくあります。 放射能災害のなかの川内村は少し特異な所があって、原発事故から30キロ内でありながら風向きのせいで線量が低く、帰還容易の見通しから先んじて除染が始まった所です。それを見ていた郡山市民からは、「線量が高い郡山より先に低い川内の除染が早いのは何事」と怒りの声が上がっていました。 郡山に多く避難していた川内村民が逆に恐縮したり、住宅を除染しても山間部の川内は里山からScが流入してきて線量が戻るケースも考えられます。年配者は帰還してもそのような事情から子供や子供を持つ親は帰還を見合わせるため、帰還者の大半は高齢者ということになります。となれば異常な高齢化コミュニティになってしまいます、まさに「姥捨山」状態。この様な異形の社会を生むことを承知で、低線量被曝被害のコンセンサスも出来ないうちに帰還を進めたがる論調には首をかしげてしまいます。
事故を矮小化して過去の出来事として葬り去りたいのでしょうか。しかし、日本の科学技術や成長性に懐疑の目を向け始めた世界は「それで良し」となるとは思えません。保守派の櫻井氏はそれでも亜細亜に冠たる日本国を演出したいのかもしれません。 戦後廃墟から立ち上がって経済大国を作ってきた日本人の矜持は「張子の虎」は望んでいないと私は見るのですが。
テーマ:ほっとけない原発震災 - ジャンル:政治・経済
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